採集された月のサンプルは袋に入れられ、ケースに収納されました。ケース内の特製アルミメッシュパッドが、ロケットの発射時に起きる激しい振動や宇宙船の着水時の衝撃から守るように装備されていました。また、三重密封構造のアルミ製シェルにより、月と同じ真空状況を保持し湿気や汚染物が入り込まないようになっていました。

月への旅行中、月の石持ち帰り容器（ALSRC）はModular Equipment Storage Assembly (MESA)という機器収納部に収納されていました。MESAはアポロ月着陸船の下段にあり、そこにはサンプル採集ツールや他の用具がありました。

アポロ11号月のサンプル収集のための道具には、ハンマー、トング、箱型のスコップ、伸縮式ハンドルなどが含まれていました。複数の道具に使用できる伸縮式ハンドルを使うことで、開発者は重さとスペースを少なくすることができました。11号後のアポロでは、ノミ、レーキ、電池稼働のドリルなど、多様な道具が搭載されました。

月のサンプルは「石の箱」に入れられ、周回中の指令船に戻るために月着陸船の上段に収納されました。宇宙飛行士は、高い場所に箱を上げるために用意されたコンベヤーを使用する予定でしたが使い勝手が悪かったため、自分たちで持って月着陸船のハシゴを登って中に入れました。

1969年、アポロ11号は人類にとって最高の業績でした。50年経過し、アポロ11号ミッションによって出来た様々な道具は、突出した発明と開発の産物と見なされています。エピソード3では、ミッション遂行のために重要なツールが商品工学及び技術の限界をどのように超えていったのか、という部分を見ていきます。

アポロミッションは人類が冒険した中で一番大掛かりなものでした。予期しないようなちょっとした問題が一瞬でシステム全体に及ぶような壊滅的な問題を引き起こすことになり兼ねませんでした。アルミケース開発をサポートしたゼロハリバートン、オメガの時計、ハッセルブラッドのカメラのように耐久性があり信頼できる機器のみが必要とされ、月への旅行を実現させることが出来たのです。